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貸金業制度に関する懇談会平成18年4月18日弁護士宇都宮健児氏アコム株式会社代表取締役木下盛好氏

貸金業制度に関する懇談会


慶應義塾大学経済学部教授・吉野直行氏 弁護士・宇都宮健児氏 アコム株式会社代表取締役社長・木下盛好氏らの有識者による現行の貸金業制度そのものを見直す座談会。

平成18年4月18日
中間整理へ向けて
■吉野座長の中間整理抜粋
■木下盛好氏の意見提出抜粋
■宇都宮健児弁護士の提言

 

座談会これまでの中間整理へ向けて①
吉野座長の提出資料より
■はじめに
当懇談会においては、貸金業制度等のあり方を議論するに際しては、多重債務者の発生や増大をいかに防止するかという観点が重要であるとの認識を共有した。このほか、個人や中小企業に対する金融仲介機能の健全な発展という観点が重要であるとの意見もあった。
・ 多重債務者の発生や増大を防止するための対応としては、貸金業者に対する規制を中心としつつも、円滑な債務整理のための基盤形成、社会保障との適切な役割分担、金銭教育やクレジットカウンセリングの普及、貸金業にかかる犯罪行為の取締策強化等をあわせた、総合的な取組みが必要であることについて概ね一致した。
・ 貸金業者に対する規制については、貸付けの量と金利と期間の問題、貸金業への参入規制、貸金業者に対する行為規制、自主規制を含めたエンフォースメントのあり方など、様々な要素が相互に密接に関連しているため、全体としてとらえ、あるべき規制を整理する必要があるとの認識で概ね一致した。
・ 貸金業者に対する規制のあり方を考えるにあたっては、情報や交渉力の面で、業者と個人等の間には差があることから、より重い注意義務を業者側に課すという形で問題に対処することを基本とすべきであるとの意見があった。
・ 貸金業者に対する具体的な規制のあり方をめぐっては、
① 貸金業者、特に大手消費者金融業者による積極的な広告宣伝や商工ローン業者による過度の勧誘、提携先を含めたATMやインターネットなの利用を通じた過剰なアベイラビリティの供与により、需要が創出され、過剰な借入れが引き起こされているという指摘
② 本人の返済能力が十分でなくとも、他社借入れや親族等の立替払いにより返済される例があり、信用リスクが他に転嫁されているため、必ずしも価格メカニズムが正常に機能していないのではないかとの指摘等にも留意しつつ、検討する必要があるとの意見があった。

■供給者側(ひいては需要者側)への影響(ヤミ金融への流出論を含む)
・ 上限金利の設定にあたっては、貸金業者への影響も考慮すべきであるとの意見があった一方、むしろ、それが結果的に需要者側にどのような影響を与えるのかが議論されるべきであるとの意見があった。
・ 無担保・無保証であること等による与信コストの高さを考慮すれば高金利はやむを得ず、また、上限金利を引き下げれば信用リスクの高い資金需要のニーズがヤミ金融に向かうとの意見があった。
・ 他方、ヤミ金からの借り手は、自己破産者や多重債務者という借金の返済に追われている人達であって、健全なニーズではなく、過去にヤミ金が増えたことと金利を引き下げたこととは関係がないとの意見があった。
・ なお、大手貸金業者の調達金利は低い水準となっており、中小貸金業者の調達金利と異なるにもかかわらず貸出金利が近似しているのは、大手貸金業者に超過利潤が生じているということではないのかとの指摘があった。
・ 貸金市場には他業態も参入しており、今後、顧客の利益につながる金利体系ができるので、金利規制の強化は必要ないとの意見があった一方、現実は上限金利に近い水準にあり、そうした金利体系ができるまでには相当に時間がかかるのではないかとの意見もあった。

 

 

座談会これまでの中間整理へ向けて②
アコム木下社長の提出資料より
■はじめに⇒についての意見
当懇談会は、『貸金業制度等のあり方について幅広い観点から勉強する』趣旨で開催されていると聞きました。しかしながら、第1パラグラフ冒頭から「当懇談会においては、貸金業制度等のあり方を議論するに際しては、多重債務者の発生や増大をいかに防止するかという観点が重要であるとの認識を共有した。」と書かれ、その後に「このほか、個人や中小企業に対する金融仲介機能の健全な発展という観点が重要であるとの意見もあった。」と書かれています。この書き方では、多重債務者問題だけが積極的に取り上げられ、貸金業の持つ金融仲介機能に対しては積極的に評価されないことになります。もちろん、多重債務者問題は貸金業を巡る大きな課題の一つだと認識していますが、貸金業者の持つ幅広い信用度の資金需要者に対する資金供給機能は、我が国の金融システムの中で、それ相応の重要な役割を担っているのであり、
第1パラグラフでは、それを明記していただきたい。

■供給者側(ひいては需要者側)への影響⇒についての意見
「上限金利を引下げれば信用リスクの高い資金需要者のニーズがヤミ金融に向かう」と書いてありますが、これに、「平成12年の上限金利引下げの3年後に当時のヤミ金融被害の急増から「ヤミ金融対策法」が制定された、という最近の一連の動向からすると、上限金利引下げによってヤミ金融被害が再び急増する懸念が大きい。」という内容も追加していただきたい。なお、第3パラグラフでは、「ヤミ金からの借り手は、自己破産者や多重債務者という借金の返済に追われている人達」と書かれていますが、「自己破産者」は既に多重債務者ではなく、返済にも追われていない方で、かつ貸金業者から借り入れができない代表事例です。こういった方々と同等に、借り入れできない資金需要者がヤミ金に流れることを懸念しています。

 

 

座談会これまでの中間整理へ向けて③
宇都宮弁護士の提言
1 法改正の目的
このたびの金利規制及び貸金業制度に関する法改正の目的は、多重債務問題の解決にある。消費者向無担保貸金業者の貸付金残高は11兆6720億円*1、サラ金の利用者は約2,200万人にものぼる*2。リボルビング方式の「カード・キャッシング」が浸透し、サラ金のATMはコンビニエンス・ストアにまで設置され、24時間・年中無休で稼働している。不必要な規制のせいで市場の発達が遅れているのではない。市場は十分に拡大したが、そこで生じている弊害を除去することが目下の課題である。多重債務者は150万人とも200万人とも言われ、年間約20万人が自己破産をしている*3。2000年から2004年まで5年間の累計で約96万8000人である。経済苦・生活苦による自殺者は、年間約8千人である*4。同じ5年間の累計で約3万8000人であり、一つの市や町の人口にも匹敵する人数である。多重債務問題が犯罪の発生や家庭崩壊の原因となることも多い。猶予のならない、深刻な事態である。今回の法改正では、多重債務問題の解決を最優先の目的とすべきである。
2 多重債務問題の発生原因
(1)消費者に対する貸付金利は、利息制限法と出資法とが定める二つの上限金利の中間、いわゆる「グレーゾーン」金利帯で行われている。大手5社(アコム、武富士、アイフル、プロミス、三洋信販)においても金利帯別残高では「25%以上29.2%以下」が71.5%を占める最多分布帯となっている。
(2)借り手においては、この金利負担の重さが自転車操業に陥る危険をもたらしている。消費者金融利用者の平均借入残高は145万円、平均利用社数は3.3社である。3社から50万円ずつ、合計150万円を年利29.2%で借り入れて5年間の元利均等払で支払う場合、毎月の返済額は約4万8000円とな
。これを超える返済余力を持つのは年収500万円以上の世帯であるが、大手5社の利用者でも「年収500万円以下」が75.4%を占める。返済余力を超える債務を負担すると、生活費を切り詰めてもなお足りない場合や、急な出費があった場合などに、返済のための借入れを行うようになる。国民生活センターの調査によれば、「借金返済」を理由とする借り入れが「返済が困難になった時期」に増加し、借入総額・件数が多くなるほど借金返済を理由とする借入れの比率が高い、という事実が明らかされている。
(3)中小零細企業の財務諸表の平均値を用いたモデル企業分析によると、損益分岐点借入利率は11~13%である*6。年利20%を超えるような借入れを行うと、中小零細事業者においても、返済のための借入を繰り返すことになる危険がある。
(4)さらに金利が高ければ高いほど、自転車操業によって負債が膨張する程度も大きい。年利29.2%で100万円を借り入れ、毎月の利息を借入金によって支払うことを繰り返した場合、6年後の債務額は564万6772円にも達する。
(5)貸し手においては、貸付金利が高いために、調達金利の何倍もの貸倒費用を組み込みつつ高い収益をあげることが可能になっている*8。1業者による1人当たりの貸付残高は増加傾向にある*9。信用情報機関に加盟している貸金業者が、1人の債務者に対して7~10社で貸付けを継続するということが、現に行われている。高金利がリスクを吸収するために、自転車操業中の多重債務者に貸し込む構造になっている。
こうして、大量の多重債務者が発生しているのである。
(6)借り手の生活や事業を破壊するような金利では、「健全な金融仲介機能」を果たすことができない。「返済のための借入れ」を助長し「供給が需要を作り出す」という不健全な・水膨れした市場構造を、健全化しなければならない。

(4)「ヤミ金融への流出論」について
上限金利引下げに反対する理由として「上限金利を引き下げたからヤミ金融が増えた」と述べる者もいる。しかし、事実は違っている。山口組五菱会のヤミ金融事件で、「ヤミ金融の帝王」は昭和63年頃からヤミ金融業を行い、平成8年から同10年にかけて配下の者にヤミ金店舗を営ませていき、平成11年には大規模なヤミ金融組織を形成していた。いずれも、上限金利が年29.2%にまで引き下げられた平成12年の改正出資法施行よりも前のことである。ヤミ金融の被害者は、破産者と多重債務者の二通りである。サラ金が破産者に貸付けをしないことは、上限金利引下げの前後を問わず変わりがない。一方、多重債務者は必ずしも「どこからも借りられない人」ではない。4件以上の債務を抱えた状態でもサラ金からの借入れは可能である*4 のが実状だが、ヤミ金融からの勧誘の方がしばしば先行しているのである。ヤミ金融は「名簿屋」から入手したリストを利用し、ダイレクトメールや電話によって、個々の多重債務者に対して直接勧誘の手を伸ばすからである。「上限金利引下げにより、どこからも借りられなくなった人がヤミ金融へ流出した」ということではない。