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偽装ファクタリング~ファクタリングと貸金の違いとは

資金繰りに悩む経営者の方にとって、ファクタリングは魅力的な資金調達手段に見えるかもしれません。しかし、その裏には「偽装ファクタリング」という危険な落とし穴が潜んでいます。正しい知識を持たなければ、高金利の違法な貸金業者に引っかかり、経営をさらに悪化させてしまう可能性があります。

本記事では、ファクタリングと貸金の本質的な違い、偽装ファクタリングの見分け方、そして安全な資金調達の方法について、実践的な視点から解説します。

ファクタリングとは何か

ファクタリングは、企業が保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化する仕組みです。売掛金の回収を待たずに資金を得られるため、キャッシュフロー改善の手段として活用されています。

重要なのは、ファクタリングは債権の売買契約であり、金銭の貸付ではないという点です。そのため、通常のファクタリングは貸金業法の規制対象外となります。

ファクタリングと貸金の本質的な違い

項目ファクタリング(債権売買)貸金(金銭消費貸借)
取引の性質売掛債権の売買金銭の貸付
回収リスクファクタリング会社が負担利用者(借主)が負担
償還請求権なし(ノンリコース)あり
適用法律民法(債権譲渡)貸金業法・利息制限法・出資法
規制貸金業登録不要貸金業登録が必要
手数料・利息手数料(売買代金との差額)利息(年15~20%が上限)

この表から理解すべき重要ポイント:

正規のファクタリングでは、売掛先が倒産して売掛金が回収できなくなった場合でも、利用者に返済義務は生じません。これが「償還請求権なし(ノンリコース)」という意味です。一方、貸金では借主が必ず返済する義務を負います。この違いこそが、ファクタリングと貸金を分ける最も重要な境界線なのです。

貸金を規制する3つの法律

貸金業を営む場合、以下の3つの法律による厳格な規制を受けます。

利息制限法・出資法・貸金業法の役割

法律名主な規制内容違反した場合の効果
利息制限法金利の上限を規定(貸付額に応じて年15~20%)超過分は民事上無効
出資法年20%を超える高金利を禁止刑事罰(5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)
貸金業法貸金業者の登録義務、総量規制、取立規制など行政処分(登録取消・業務停止)・刑事罰

実務上の意味:

2010年6月の法改正により、出資法の上限金利が20%に引き下げられ、利息制限法と統一されました。これにより、かつて存在した「グレーゾーン金利」(利息制限法と出資法の間の金利帯)は完全に撤廃されています。現在、年20%を超える金利での貸付は、刑事罰の対象となる明確な犯罪行為です。

貸金業法の主な規制内容

貸金業者は以下の規制を遵守する義務があります:

  • 登録制度:財務局または都道府県への登録が必要
  • 総量規制:個人への貸付は年収の3分の1まで
  • 返済能力の調査義務:借主の収入・負債状況の確認
  • 取立行為の規制:威圧的な取立や深夜早朝の連絡禁止
  • 契約書面の交付義務:契約内容の明示

これらの規制は借り手を保護するためのものです。貸金業登録をせずに営業する業者は、いわゆる「ヤミ金融」であり、違法業者です。

ファクタリングを規制する法律の現状

実は、ファクタリング業を直接規制する特別な法律は現在のところ存在しません。ファクタリングは債権の売買契約として、民法の一般原則に従って行われます。

ただし、以下の場合は貸金業法の適用を受けます:

  1. 実質的に貸金と認められる取引を行っている場合
  2. 給与ファクタリング(個人の賃金債権を買い取る行為)

特に給与ファクタリングについては、最高裁判所が「貸金業に該当する」との判断を示しており、貸金業登録のない業者による給与ファクタリングは明確な違法行為です。

ファクタリングの適法性の根拠

正規のファクタリングは以下の理由で適法です:

  • 民法第466条で債権譲渡が認められている
  • 債権売買は自由な経済活動として保障されている
  • 経済産業省や中小企業庁も中小企業の資金調達手段として認知している
  • 2017年の民法改正で債権譲渡がより円滑に行えるようになった

偽装ファクタリングとは

偽装ファクタリングとは、ファクタリングを装いながら、実質的には違法な高金利貸付を行う行為です。貸金業登録を受けていないヤミ金融業者が、ファクタリングという名目で法の網をくぐり抜けようとするものです。

偽装ファクタリングの典型的な手口

偽装ファクタリング業者は以下のような方法で、実質的な貸付を行います:

  1. 償還請求権を付ける:売掛先が支払い不能になった場合、利用者に買戻しを求める
  2. 担保性のある仕組み:売掛債権の一部だけを買い取り、残額を「保証金」として留保する
  3. 集金代行契約:売掛金を一旦利用者が回収し、その後ファクタリング会社に支払う仕組み
  4. 高額な手数料:相場を大きく超える手数料を徴収する(年利換算で数百~数千%になることも)

実際の判例から見る偽装ファクタリング

過去の裁判では、以下のような取引が「実質的には貸金である」と判断されています:

判例の要点:

  • 売掛金120万円を60万円で買い取る
  • 買取代金100万円のうち、40万円は「保証金」として後払い
  • 売掛先が倒産した場合、利用者が債権を買戻す義務を負う
  • 実際には、利用者が売掛先から売掛金を回収し、ファクタリング会社に支払う

このケースでは、ファクタリング会社が債権回収のリスクをほとんど負っておらず、売掛債権が担保として機能していました。裁判所は「金銭消費貸借契約に準じる」と判断し、利息制限法の適用を認めました。

偽装ファクタリングの被害例

実際に報告されている被害の特徴:

  • 年率換算で数百~千数百%の手数料
  • 威圧的な取立(大声での恫喝、勤務先への連絡)
  • 違約金の高額請求
  • 複数の業者間で債権が転売され、さらに悪質な業者に引き継がれる

金融庁は2021年に「給与ファクタリング」業者を摘発し、社長ら7名が逮捕されています。これは法定利息の14~31倍にあたる高金利での貸付を行ったためです。

2者間ファクタリングと偽装ファクタリングの関係

ファクタリングには「2者間ファクタリング」と「3者間ファクタリング」の2種類があります。偽装ファクタリングの多くは2者間ファクタリングを装っています。

2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの違い

項目2者間ファクタリング3者間ファクタリング
契約当事者利用者・ファクタリング会社利用者・ファクタリング会社・売掛先
売掛先への通知不要(原則)必要
債権譲渡の承諾不要必要
売掛金の回収利用者が回収後、ファクタリング会社へ支払いファクタリング会社が売掛先から直接回収
手数料相場8~18%2~9%
審査の難易度やや厳しい通りやすい
資金化までの期間最短即日~数日数日~2週間

なぜ2者間ファクタリングが狙われやすいのか:

2者間ファクタリングでは、売掛先に知られることなく資金調達ができるという利点がありますが、その仕組みゆえに悪用されやすい側面があります。売掛先が関与しないため、架空債権や二重譲渡のリスクがあり、また利用者が売掛金を回収してからファクタリング会社に支払うという流れは、貸付と似た構造になっています。

ただし、正規の2者間ファクタリング自体は完全に合法であり、多くの優良なファクタリング会社が適切なサービスを提供しています。

審査の違いから見る適法性の判断

ファクタリングと貸金では、審査の焦点が根本的に異なります。この違いを理解することで、偽装ファクタリングを見抜く手がかりになります。

正規のファクタリングの審査ポイント

審査項目重視度理由
売掛先の信用力★★★★★売掛金を回収できるかが最重要
売掛債権の実在性★★★★★架空債権でないことの確認
売掛金の支払期日★★★★☆回収時期の確認
利用者の信用力★★☆☆☆二重譲渡防止のための参考程度
利用者の返済能力★☆☆☆☆基本的に審査対象外

貸金業者の審査ポイント

審査項目重視度理由
借主の返済能力★★★★★返済原資の確認が最重要
借主の信用情報★★★★★過去の借入・返済状況
年収★★★★★総量規制による制限
既存の借入額★★★★☆総量規制の確認
売掛債権の有無★☆☆☆☆担保としての参考程度

見分けるポイント:

もし「ファクタリング」と称する業者が、あなたの個人信用情報や年収を詳しく調査し、「返済能力」について質問してくるなら、それは実質的な貸金である可能性が高いです。正規のファクタリング会社は、あなたの売掛先の信用力を最も重視します。

悪質業者を見抜く7つのチェックポイント

以下のいずれかに該当する業者は、偽装ファクタリングや違法業者の可能性があります:

チェックリスト

No.チェック項目危険度
1償還請求権がある(売掛先が倒産したら買戻しを求められる)★★★★★
2手数料が異常に高い(20%以上)★★★★★
3貸金業登録番号の提示がない★★★★☆
4契約書に「貸付」「利息」などの文言がある★★★★★
5あなたの返済能力を詳しく調査する★★★★☆
6売掛債権の実在確認を十分に行わない★★★☆☆
7契約内容の説明が不十分・契約書の控えをくれない★★★★☆

具体的な見分け方の実践例

場面1:契約条件の確認

  • ✗ 「売掛先が倒産したら、御社に買い戻していただきます」
  • ✓ 「売掛先が倒産した場合のリスクは当社が負います」

場面2:手数料の妥当性

  • ✗ 売掛金100万円に対して手数料30万円(30%)
  • ✓ 2者間で10~18%、3者間で2~9%が相場

場面3:審査内容

  • ✗ 「あなたの年収と他社借入額を教えてください」
  • ✓ 「売掛先の会社情報と取引実績を確認させてください」

場面4:登録の確認

  • ✗ 「当社はファクタリング専業なので貸金業登録は不要です」(これ自体は正しいが、実質的に貸金を行っているなら違法)
  • ✓ 正規のファクタリング会社であれば、会社の実態を明確に示せる

金融庁や日本貸金業協会への確認方法

不安な場合は、以下の方法で業者の実態を確認できます:

  1. **金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」**で登録状況を確認
  2. 日本貸金業協会のウェブサイトでヤミ金融業者の情報をチェック
  3. **消費者ホットライン(188)**に相談

給与ファクタリングの違法性

個人の給与(賃金債権)を買い取る「給与ファクタリング」は、最高裁判所の判断により貸金業に該当するとされています。

給与ファクタリングが違法とされる理由

  1. 労働基準法の趣旨:賃金は労働者本人に直接支払われるべきもの
  2. 実質的な回収構造:債権の買戻しによる回収しかできない
  3. 債権譲渡通知の留保:使用者に知られたくない労働者の心理を利用

実際の判例では、給与ファクタリング業者が「貸金業法違反(無登録営業)」「出資法違反(高金利)」で摘発されています。年利換算で数百~千数百%という法外な手数料が課せられていました。

安全なファクタリング業者の選び方

適法で信頼できるファクタリング会社を選ぶには、以下のポイントを確認しましょう。

優良業者の特徴

  1. 会社情報の透明性
    • 運営会社の所在地・代表者名が明確
    • 会社のホームページが充実している
    • 電話番号が固定電話(携帯のみは要注意)
  2. 契約内容の明確性
    • 契約書の控えを必ず交付
    • 手数料の内訳が明示されている
    • 償還請求権がないことが明記されている
  3. 適切な審査プロセス
    • 売掛債権の実在確認を丁寧に行う
    • 売掛先の信用調査を実施
    • 面談またはオンライン面談を実施
  4. 実績と評判
    • 運営年数が長い
    • 取引実績が豊富
    • 口コミや評判を確認できる

手数料の相場を知る

適正な手数料の目安:

  • 2者間ファクタリング:8~18%
  • 3者間ファクタリング:2~9%

20%を超える手数料は、違法な高金利の可能性を疑うべきです。年利換算すると利息制限法の上限(20%)を大きく超えることがあります。

もし偽装ファクタリングの被害に遭ったら

万が一、偽装ファクタリングの被害に遭ってしまった場合は、すぐに以下の対応を取りましょう。

相談窓口

  1. 警察(生活安全課または暴力団対策課)
    • ヤミ金融や違法業者の摘発を相談
  2. 消費生活センター(消費者ホットライン:188)
    • 消費者トラブルの相談
  3. 日本貸金業協会(0570-051-051)
    • 貸金業者に関する相談・苦情
  4. 法テラス(0570-078374)
    • 法的トラブルの相談
  5. 弁護士・司法書士
    • 債務整理や法的対応の相談

取るべき対応

  1. 証拠の保全
    • 契約書のコピー
    • やり取りのメール・メッセージ
    • 振込記録
  2. 支払いの停止を検討
    • 違法な契約は無効である可能性
    • 専門家に相談してから判断
  3. 二次被害の防止
    • 他の業者からの勧誘に注意
    • 個人情報が流出している可能性

資金繰りで困ったら

ファクタリング以外にも、合法的で安全な資金調達方法は複数あります。

主な資金調達手段の比較

方法メリットデメリット適した状況
銀行融資低金利・大口可能審査厳格・時間がかかる長期的な資金需要
日本政策金融公庫低金利・創業支援あり審査に時間創業・設備投資
ビジネスローン審査が比較的早い金利がやや高め短期の運転資金
正規のファクタリング最短即日・審査柔軟手数料がかかる急な資金需要
売掛債権担保融資(ABL)金利が比較的低い担保設定が必要継続的な資金需要

公的支援制度の活用

  • 信用保証協会の保証制度:銀行融資を受けやすくする
  • 中小企業向け補助金・助成金:返済不要の支援
  • セーフティネット保証:経営が悪化した場合の支援

最後に:おすすめのファクタリング業者

信頼できるファクタリング業者を選ぶことは、健全な資金調達の第一歩です。

業者選びの際は、以下の点を必ず確認してください:

  • 償還請求権のない契約(ノンリコース)
  • 明確な手数料体系
  • 丁寧な説明と透明性のある契約
  • 実績と信頼性

さらに詳しいファクタリング業者の比較情報は、こちらをご覧ください:
ファクタリングおすすめ業者比較ページ

適切な知識と慎重な判断で、安全な資金調達を実現しましょう。不安な点があれば、必ず専門家に相談してから契約することをお勧めします。



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